古くから日本人の暮らしのそばにあった和紙。しかし、気がつけば邸宅から和室が消え、記録は紙からデジタルへと変わりました。
エフスタイルでは愛媛の伝統和紙の世界に新風を起こす二人のクリエイターを訪ねました。
①<和紙イズム>
五十崎和紙職人:佐藤友佳理さん(西予市在住)
イギリスで3年間モデルとして活躍したあと、「モノづくり」への衝動に駆られてデザインを学んだという佐藤さん。ふるさと愛媛に帰り、伝統産業である和紙の復興プロジェクトに加わった時「なぜもっと和紙を作らないのか。もっと売れる努力をするべきだ。」と考えたそうですが、和紙の現状を知れば知るほど、自分のおこがましさに気づいたといいます。
「世の中のありとあらゆる現場は洋紙やパソコンに取って代わっていて、和紙需用は年々下がっている。どんなに高い技術があったとしても、これほど小さくなってしまった市場を前にして【売れる】和紙をつくって欲しいと職人さんに求めるのはとても難しいことでした。」自分にできることは一体何だろう。
「私が職人さんたちの熟練の技を身につけたとしても、同じようにはできないんです。私にできることはファッションの世界の中でこの目が見てきた【モダンとの融合】。今あるニーズを知り、それに応える方法を自分なりに考えることにパッションを感じました。」
まさに適材適所。紙縒りに似た繊細な技法で創るモービルにゼオライトを混ぜた新素材の和紙を使うことで、湿度や臭いを抑える機能性と女性らしいデザイン性を両立させたり、邸宅や店舗の間仕切りに透明感のある和紙を取り入れたり。
「新しいデザインに伝統ある和紙を使うことで、現代の暮らしや今の空間を邪魔しない和テイストを実現したい。和紙はさりげなく目隠ししながら人の気配を感じられるので、食のシーンに最適なんですよ。」
和だけど、和過ぎない。空間に溶け込むイメージを大切にしたいと言います。
乳幼児が夢中になると話題の和紙ボールも彼女がひとつひとつ手作りしたもの。中に仕込んであるかわいらしい鈴も、和紙が破れ、子供が成長してからもずっとそばに置いて使い続けることができることに心を打たれます。
「使い捨てではなく、本質で選ばれるモノづくりを目指して、自分の間合いでゆっくり歩みたいと思います。」
それは長く愛されるファッションと同じようなものかも知れません。
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